2013-01-01から1年間の記事一覧

トゲと涙とオペ室と

散歩の道に、実を結び出したばかりのイガグリの赤ちゃんが、ポツリポツリと落ちている。激しい雨にやられたらしい。折角生まれて来たのに落下。同情の余地はあるけれど、でもね、悪いけど僕はイガを好きになれない。つまりね、トゲのあるやつが好きではない…

那須のナスボケのナス

ニッポンは大したものだ。原発事故の汚染水が未だ海に垂れ流されているというのに、電車内もデパートもギンギンに冷えている。食料だって、自給率40%を切りかけた国なのに、有り余っているかの如き振る舞いだもの。主要10社のコンビニで捨てられている…

奇人変人人見知り

今年は順番制で巡り来る町会の班長さん。何かと小用が多く、那須滞在はままならない。 その任務としての大イベントは、八月頭の盆踊り。そこには二つの辛さが待っている。 辛さの一つは、炎天下での草むしりと櫓の組み立て作業。朝晩炬燵の生活者が体温同等…

夏の庭は虫の春

背中にオレンジ色の斑を持ったカメ虫みたいなやつが二匹、庭のチェリーセージの葉の上で交尾を始めた。 猫の盛りは春先だが、僕が庭で見る限り、虫にとっての恋の季節は春ではなくて夏らしい。無粋にも枝葉や草花の陰などを観て回ったら、寄り添い、重なり、…

昼間のホタル

今週末は「海の日」を無理矢理月曜にひっつけての三連休。 海の日は元来7月20日に固定されていた。それを「ハッピーマンデー制度」とかいう「ご都合祝日」に変えたのは、木を見て森を見ない政治家たち。どうせ新成人は酒喰らって暴れるだけだし、老人はその…

おっかねえキノコ汁

「モノを貰うタイプ」だと以前書いたが、今も貰い続けている。先日もコンコンと玄関ドアを叩く音で出てみると、見覚えのないオッチャンがニコニコ立っていた。(はて、誰だっけ?)と戸惑っている僕に、「これ、食べてよ」とオッチャンは紙袋を差し出した。…

毎日通る情報屋さん

平日の森は閑散としているから、時たま声が聴こえたりすると「何奴か?」とか「何事ぞ?」とばかり、僕も妻も窓辺に走って外の様子を窺ったりする。世を欺いて生きているので追手を恐れている…というわけではない。ただ単に「人間だ!」という単純な興味に駆…

闇夜の黒い物体

夏至が過ぎた直後のこの時期を、僕は好きになれない。梅雨だからとか、初鰹が遠ざかるからとか、そんな理由ではない。昼間の長さが日一日と短くなる。それが淋しいのだ。夏に向かっていた溌剌とした気分が酷く萎える。人生を折り返し、執着地点へ向かう気が…

因果の報い

子どもの頃は炎天の夏が好きだった。陽光の激しい分だけ激しく遊んだ。那須の庭草はあの頃の僕のようだ。陽光が激しければ激しい分だけ、嬉々として萌え上がる。「おいおい、そんなに伸びるなよ」と、履き古したパンツのゴムみたいになってしまった僕は、老…

腹から声を出す

「ちょっとスーパーに行ってきます」と妻が出て行くと、まず一時間は戻らない。最寄りのスーパーでも十キロ近くあるし、少し規模の大きな所と思えば、往復三十キロ超のロングコースになるからだ。 妻が出掛けた森は閑古鳥。「壁に耳あり柱に白あり」なんぞは…

女の立ちション

近所に住む(と言っても一キロ近くはあるが…)おばさんが、ときどき庭の片隅で立ちションしている。此れ見よがしではないが、人目を忍んでいる風でもない。そもそも自宅の庭なのだから、人目を忍ぶならツッカケを脱げば済むことだ。どうにも真意が測りかねる…

深編み笠のおばさん

黒いネットを頭からすっぽり被ったご婦人が、毎日わが家の前を通る。ジャック・ラッセル・テリアという大層敏捷な犬を連れている。高低差の激しい森の往復路を、ご婦人もテリアもヒョイヒョイ進む。その足色、都会の散歩犬どもを鼻で笑うかのようだ。 それは…

舶来品信奉亡霊蘇る

青空の下、ウッドデッキに腐食防止の塗料を塗った。毎年のこの作業は、デッキの木か僕たち夫婦か、どちらかが朽ち果てるまで続く。 塗料には決まりがある。四十数軒で構成されているビレッジ指定の舶来品を使わなくてはいけないのだが、この「舶来品」という…

タンポポを喰う

ゴールデンウィークは尚のことだが、土日祭日の那須の道路は車が長蛇のノッタラリン。古希族となった僕の蛇口の精度はすっかり落ちて、うっかりすると車中失禁を招く。 「そんなとき、わざわざ行かなくてもいいじゃない」と、妻は休日がらみの那須行きを渋る…

変なお相撲さん待望す

大相撲夏場所は稀勢の里が初日から13連勝。もしや34場所ぶりに国技館に日本人力士の掲額なるか─と期待の向きも多かったろう。しかし結果はボトンボトンとタドンが最後に二つ並んで「また今度いつかね」ということになった。挫折なくして栄光なし。涙の量…

唯の大喰いに喝!

僕はテレビがあまり好きじゃない。生涯一社のテレビ局に勤め、社内結婚で家庭を作り、家計の殆どをテレビ会社の給与で賄い、定年後は大学で「メディア社会学」の教壇にも立ち、現在はテレビの厚生年金で暮らしている。そんな男が「テレビは好きじゃない」と…

ああ感動!

以前、千代田区の中学校に招かれ、全校生を前に「感動しよう!」というテーマで講演した。「中学生諸君、心して感動しよう。花の香り、鳥のさえずり、流れる雲、寄せる波、感動の種はどこにでもある。それをしっかり見詰めることが出来るなら、羽ばたく自分…

お帰りなさい!巨人軍!

あまりに下らん番組ばかりのテレビに、腹立てながらチャンネルをバシバシ替えていたら、どこかのBSで巨人の試合をやっていた。勝っている。ここ2〜3年、強い巨人の兆しを感じる。とてもめでたいことだと思う。だって、ひところの巨人ファンは皆しょぼく…

味覚が崩壊する!

山道のヘリや野っぱらのいたる所で、フキノトウが惚けている。以前はそうなる前に奇麗サッパリ採られたものを、嗚呼原発は恐ろしい。 フキノトウには想い出がある。「あっ、フキノトウだ!」と大喜びで持ち帰り、料理する段になって「これ、本当にフキノトウ…

オナラ一日二百億発

新聞のスクラップを開いたら、牛のゲップの話が出て来た。牛なら、わが家の周りに幾らでも居る。夜になると牛舎を抜け出て散歩する牛まで居る。那須のわが家から三百メートル程の夜道で、散歩中の黒牛にぶち当たり、車を一台パーにした人も居た。外灯の無い…

安吾のさるまた

「十年ひと昔」と言うように、社会は刻々様変りする。好い方向への変化もあろうが、僕たちの年代から見ると、淋しい変化が目について困る。 孫を持つ身からすると、散歩中、土を蹴って遊び捲る子どもたちの姿を目することが少ないのは、じつに淋しい。「子ど…

うじゃうじゃ怖いもの

ガス検針のおじさんがやって来て「いゃ〜あ、怖い恐い」と言った。 「検針しようとするとサル軍団が周りを取り囲んでね、一斉に歯を剥くの。背中に子ザルなんか乗せちゃってさあ」 「子育て中は防衛本能が働いて、気が立っているんだろうね」と言ったら、「…

真の師なのかも…

中学三年時のクラス会の誘いが届いた。五月だという。このクラス会は、昭和33年の卒業以来55年を経て初めての開催。(何故今頃になって?)と開封時は思ったが、改めて考えてみればそれほど謎めいたことではない。ジャンケンで負けた者から墓場に入る年…

骨身に沁みる骨

思えばひと月前、南ケ丘牧場脇の交差点で思い切り転んだ。何かにつまずいたとか、牛のフンをフンで滑ったとか、窪みのモグラに足を取られたとか、そうした、何らの自覚もないままの転倒である。傘も帽子も、ポケットの中のケイタイも、保持者の許可なく思い…

心を青春に置き換える

那須街道沿いの植木屋で苗木を何本か買って来た。植える段になって、そのうちの一本が何の木だったか忘れてしまった。アイウエオを「ア」から「ワ」まで頭の中でなぞってみたが、求める名前は出て来ない。思案の最中、散歩仲間でもある『歩く草花事典』みた…

ハトの怨念

那須は雲ひとつない快晴。庭から茶臼岳が手に取れそう。 お隣のご夫婦と立ち話をしていたら、ド〜ンと空からドデカイ物体が落ちて来た。目の前僅か一メートル。ちょっとずれていたら、この日記は天国で書くハメになったろう。「何ごとぞ!」と物体を見れば、…

モノを貰うタイプ

「田舎の人は親切だ」とよく耳にしたけど、成程那須の人たちも親切だ。玄関口をトントンするので出てみると、見知らぬ人がニコニコしながら立っていて、紙包みをヌ〜ッとよこしたりする。 「これ、あたしが作ったんだけどさあ、よかったら食べてくんない?」…

便意三大恥話

自宅から東に向かうと森を抜けて公道に出る。反対側の西に向かうと別荘地。大小の別荘が林間の中に点在する。僕は僕自身に一日一万歩を義務付けているが、散歩のほとんどが西へのコースだ。山坂ばかりだが、森羅の息吹が感じられて心地よい。思いがけず昼間…

呼び名の話

庭から望む三月の那須連山は白い。 那須に通い始めた二年ほど、僕はこの山々を「あの山」とか「その山の後ろの山」などと呼んでいた。庭から四つも見えるのに、知っていたのは主峰の茶臼岳だけだったのだ。 ある時、別荘管理事務所の鈴木さんに「あれ、何て…

猛女と鬼監督

♪踊る阿呆に見る阿呆、どうせアホなら踊らにゃ損損…と、社長も議員も公僕諸君も「安倍音頭」(アベノミクスとも言う)を踊り出し、景気づけの「五輪花火」もぶち上がった。東京ではない那須のテレビも、オリンピック評価委員が来日したとかで、連日「五輪、…