『野外映画会』

『野外映画会』
 夏休み中の昼下がりの校庭に、二本の長いポールが運び込まれる。ぼくはこの時点からワクワクし始める。ポールに白い布幕が張られ、それが校庭の中央に立つ。映画のスクリーンだ。この主催の主がどこだったかは忘れたが、夏の夜の野外映画会は毎年行われた。
 上映作品は、二流館から三流館を隈なく廻って来たと思われる、相当古いものが多かった。多分、只か只同然で借りて来た作品群だったのだろう。雨かと思うほどのキズがあったり、時にはフィルムがプッツリ切れることもあった。そんな時は何フィートか飛ばして上映を再開させるわけだが、見ている方も只見だから、文句も言わずに再開を待った。
 スクリーンは校庭の中央だから、観客の一割ほどは裏から見ていた。ぼくも大抵裏から鑑賞する〝へそ曲がり組〟。裏は空いていて寝そべっても見られるからだが、少し困ることがある。野球の場面ではバッターが打って三塁方向に走り出すし、看板は読めないし、チャンバラは全員が左手で刀を振り回して異様な雰囲気。だけどそんな小さな不都合が、今や想い出の中で〝好都合の味〟となっている。