2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

心一つに立ち上がれ!7.

烏帽子山線の上り車両待ちの女の人が言った。 「この辺におトイレとかは…」 「ああ、便所ね。この駅には無いんだよね」 茂平さんはそう答えてから、「あらら、もたない感じだなあ」とつぶやいた。 「ねえ、大きい方?」 こんな聞き方、普通はしない。しかも…

心一つに立ち上がれ!6

夕飯のとき、お母さんが笑いながらお父さんに言った。 「きょう、うちのぶどう畑でね、心之助が一心じいちゃんを見たって、真っ青な顔して逃げ帰って来たのよ」 「おやじを?」 「そうなの。その人、きのう供えたワインを飲んでいたんですって。昼間からユウ…

心一つに立ち上がれ!5.

夏休みの初日。ぼくは画板を下げて亀の子山を登った。亀の子山の南斜面には、じいちゃんがよいワインをつくるために丹精込めて育てあげた黒ぶどうの畑がある。そこからは広大な盆地が眼下に見渡せる。ぼくはこの眺めが大好きだ。「一級の詩人なら、一級の詩…

心一つに立ち上がれ!4.

地区の女性が年寄りから赤ちゃんまで、一丸となって起こしたユウレイ騒動は、一部の地域のローカルニュースではおさまらず、中央の新聞やテレビまでが全国ニュースとして報じた。 人間は、それが自分のこととなると『慾に手足を付けたモンスター』にもなった…

心一つに立ち上がれ!3.

烏帽子山線が最初の廃線危機に見舞われたのは、もう二十七年も前のことだ。お父さんの話では、その危機から村を救ったのが一心じいちゃん。じいちゃんが村を救うために編み出した戦術は、空飛ぶ鳥がそれを見て、驚きのあまり地面に落ちたというから奇策ぶり…

心一つに立ち上がれ!2.

ぼくは、深草村・鬼恋小学校の破暮分校に通う六年生。一心じいちゃんが学んだころは分校ではなく、一人前に独立した「破暮小学校」だった。児童数も当時は百人を超えていたそうだ。それが今ではたったの八人。十五年前、二十人を割った時点で鬼恋地区の鬼恋…

心一つに立ち上がれ!1.

『ひとしずく』を垂らし続けて早70垂れ超。こんなに垂らしちゃったら「ひとしずく」ではなくなる。それに、これ以上垂らし続けたら、元来が素直でない僕のこと。内容からして、いよいよ〝偏屈爺〟になってしまう。うん? もう充分になってるかもね。 そこ…