2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ナナカマドの仲間たち 8.

8.おれたちの秘密基地 七月に入ってすぐのこと、日本列島に台風が上陸した。山で恐ろしいのは台風よりも山嵐とかこがらしだ。それらに比べたら「台風なんぞ屁でもない」と思っていたけど、今度の台風は半端じゃなかった。武の家のニワトリ小屋はつぶされて…

ナナカマドの仲間たち 7.

7.山組、またもや完敗 みみずっ原にやって来た。そこには小川がある。笹やぶもある。ヘビイチゴが生えている。足元のじめじめは、いかにもヘビの天国だ。 「獲ったヘビは、これに入れろ。ここに置いておくからな」 おれは、父ちゃんから借りて来た魚釣り用…

ナナカマドの仲間たち 6.

6.太洋ギャフン作戦 いつしか太洋のふしぎな魅力にやられてしまい、おれたちは、あいつ無しでは遊べなくなっていた。 それにしたって、あいつの格好は良過ぎる。海しか知らないはずなのに、山のどんな遊びをやらせても、スイスイ見事にこなしてしまう。山…

ナナカマドの仲間たち 5.

5.ふしぎな魅力 「海の男」と名乗ったわりに、太洋は木登りが好きだった。太洋がいないとき、おれたちは大きな木を片っ端から見上げて回った。片っ端と言ったって、ケヤキやサワグルミの何本かを見上げるだけのこと。何本目かの茂みの中に、たいてい太洋の…

ナナカマドの仲間たち 4.

4.源治、ますますへこむ クモの死闘に破れ、カマキリ踊りでも負けた源治が、三つ目に選んだ遊びは「とんぼ獲り競争」だった。 「獲るのはヤンマだけ。シオカラやムギワラじゃだめだぞ。獲り方は自由。好きなやり方でいい。だれかが二匹目を獲ったら、そこ…

ナナカマドの仲間たち 3.

3.源治、少しへこむ「山のこと、たっぷり教えてやっからよう」と、源治は確かにそう言った。だから、下校の道々ミッコが聞いた。 「ねえ源治、あんた山のこと、何から教えてあげるつもりなの?」 「おまえだったら何から教える?」 源治の頭には、これとい…