2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『靴磨き少年』

『靴磨き少年』 東京の国鉄の駅に近いガード下では、戦地で負傷した復員兵(傷痍軍人)が木綿の白衣を着て、ハーモニカやアコーデオンを奏しながら、通行人からの金銭支援を仰いでいる姿がよく見られた。戦争に行ったにしては若過ぎる─と思える人も居たと聞…

『ニコヨン』

『ニコヨン』 ニコヨンとは、昭和二十四年の緊急失業対策法施行を受け、東京都が日雇い労働者の最低保障日当を240円(百円札2個と十円札4個)としたところから出た言葉。しばらく日雇い労働者の通称となっていたが、現在は死語になっている。 日雇い労…

『お正月』

『お正月』 何となく、今年もよい事ある如し。元旦の朝晴れて風無し─(石川啄木)。この人までもがそう謳ったお正月。子どもが冷静でいられるわけがない。商店街に最初の松飾りが立った瞬間、ぼくの心は正月色に染め抜かれた。口を突くのは ♪もういくつ寝る…

『バスガール』

『バスガール』 ♪田舎のバスはおんぼろ車 タイヤは泥だらけ窓は閉まらない…と歌ったのは中村メイコの『田舎のバス』(昭和二十九年)。♪若い希望も恋もある ビルの街から山の手へ…は初代コロンビア・ローズの『東京のバスガール』(昭和三十二年)。 『田舎…

『ポン菓子』

『ポン菓子』 昔のぼくたちは、音に対して敏感で、一音節で聴き分けた。「チリン」と来たら金魚屋だし、「カラン」と来ればアイスキャンデー。「カチッ」と鳴ったら紙芝居、「チンチンドン」はチンドン屋。「ド〜ン」と来たらポン菓子である。 ポン菓子とは…

『ヘップバーン刈り』

『ヘップバーン刈り』 昭和二十九年の夏、日本列島の若い女性の髪形が一気に変わった。その年の四月に映画『ローマの休日』が公開され、アン王女を演じた新人女優オードリー・ヘップバーンのショートカットに魅了されたのだ。ある銀行では、十八人の女性行員…