2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

小説『木馬! そして…』26.

16.ざんげの旅「あらためまして、皆さま、ようこそお越し下さいました。わたくしは、いつかこの日の来ることを待ちこがれていたのでございます。そして、ついにこの日が来たことを、心の底から喜ぶものでございます。と申しますのも、わたくしを支えて…い…

小説『木馬! そして…』25.

元町あかりの那須別荘の玄関前。そこに横付けされたマイクロバスの運転席から山ちゃんが飛び出すと、ゲストのエスコートにまわった。 「はい、足もとに気をつけて下さい。慌てなくていいですよ。ここは標高六百五十メートルですが、息苦しくはないですか? …

小説『木馬! そして…』24.

15.別荘にて 平成二十一年十月三十一日。土曜日。 那須連山の紅葉は終わったが、ふもとの色づきはいまが盛りだ。赤や黄色に染まった林を抜けると、大きな空が頭上に広がる。そこに北欧風のおしゃれな館がある。元町あかりの別荘だ。いつもはひっそりたた…

小説『木馬! そして…』23.

23. 幸子は確信の目で頷くと、その目を木馬から元町あかりに移した。 「確かに、これは当時の木馬に間違いないと思います」 「よかった。木馬の持ち主さまが見つかって。わたくしが、いまこうしていられるのは、この木馬のお陰です。言い換えますと、香川…

小説『木馬! そして…』22.

14.恩人はどこに… 平成二十一年五月二十三日。 「世間は広いようで狭いと申しますけれど、こんなに近くにいらしたなんて。ここが北海道ならいざ知らず、半分はユメ気分で参りました」 「はい。ほんとうに驚きました。歩いても三十分と掛らないところに、…

小説『木馬! そして…』21.

13.わたしの子じゃない! 望はくたびれ果てていた。アパートを出て最初の二日は木賃宿に泊まったが、そこでお金が底をついた。 この二日間、望は託児所、保育所、介護ホーム…と、乏しい知識の中から思いついた施設のすべてを、片っ端から訪ねて廻った。わ…