2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『チンドン屋』

『チンドン屋』 ♪空に囀る鳥の声 峰より落つる滝の音 大波小波と滔々と 響き絶えせぬ海の音 チンドン屋の定番曲『美しき天然』。清くして悲し気な旋律が、小学生のぼくを惹きつけた。見えない糸にぼくは挽かれ、町内グルグルついて回った日々がある。 チンド…

『サンドイッチマン』

『サンドイッチマン』 ♪ロイド眼鏡に燕尾服 泣いたら燕が笑うだろう 涙出たときゃ空を見る… 昭和二十八年に鶴田浩二が唄ってヒットした『街のサンドイッチマン』。道化の陰に隠されている哀しさが、聴こうとする耳に、ジワリ染み入るような歌だった。それも…

『雑巾がけ』

『雑巾がけ』 雑巾がけとは、雑巾で拭き掃除をすることであり、比喩的には、下積みの苦しい作業や経験を指したりする。その比喩をぼくたちは頷く。学校の掃除当番で一番辛かったのが、冬の教室の雑巾がけだったから。 教室の机と椅子を後ろに押しやり、冷た…

『蠅たたき』

『蠅たたき』 「ウルサイ」を「五月蠅い」と書く。当て字も甚だしいが、それほど甚だしくうるさかったのが、初夏に向かって繁殖中の蠅だった─ということだろう。ちゃぶ台におかずが運ばれた瞬間から、蠅はどこからか必ず出現する。いや、「どこから…」と詮索…

『量り売り』

『量り売り』 『浪花恋しぐれ』の春団治が「酒や酒や酒買うて来い!」と怒鳴ると、女房は仕方なく信楽焼きの徳利を持ち、酒せいぜい三合ほどを買いに行く。わが家の父は下戸ゆえそんな憂き目と無縁だったが、当時は酒に限らず、味噌、醤油、佃煮、乾物、多く…

『裁縫』

『裁縫』 ぼくと同世代の友人らに、「子どもの頃に見た母親の日常の一コマを写真に残すとしたら、どんなシーン?」と尋ねたら、諸々出たけど、絵になるのは「陽だまりの縁側で裁縫している姿」ということに納まった。 目を閉じると、そんなシーンが浮かぶ。…