2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

毎日通る情報屋さん

平日の森は閑散としているから、時たま声が聴こえたりすると「何奴か?」とか「何事ぞ?」とばかり、僕も妻も窓辺に走って外の様子を窺ったりする。世を欺いて生きているので追手を恐れている…というわけではない。ただ単に「人間だ!」という単純な興味に駆…

闇夜の黒い物体

夏至が過ぎた直後のこの時期を、僕は好きになれない。梅雨だからとか、初鰹が遠ざかるからとか、そんな理由ではない。昼間の長さが日一日と短くなる。それが淋しいのだ。夏に向かっていた溌剌とした気分が酷く萎える。人生を折り返し、執着地点へ向かう気が…

因果の報い

子どもの頃は炎天の夏が好きだった。陽光の激しい分だけ激しく遊んだ。那須の庭草はあの頃の僕のようだ。陽光が激しければ激しい分だけ、嬉々として萌え上がる。「おいおい、そんなに伸びるなよ」と、履き古したパンツのゴムみたいになってしまった僕は、老…

腹から声を出す

「ちょっとスーパーに行ってきます」と妻が出て行くと、まず一時間は戻らない。最寄りのスーパーでも十キロ近くあるし、少し規模の大きな所と思えば、往復三十キロ超のロングコースになるからだ。 妻が出掛けた森は閑古鳥。「壁に耳あり柱に白あり」なんぞは…

女の立ちション

近所に住む(と言っても一キロ近くはあるが…)おばさんが、ときどき庭の片隅で立ちションしている。此れ見よがしではないが、人目を忍んでいる風でもない。そもそも自宅の庭なのだから、人目を忍ぶならツッカケを脱げば済むことだ。どうにも真意が測りかねる…

深編み笠のおばさん

黒いネットを頭からすっぽり被ったご婦人が、毎日わが家の前を通る。ジャック・ラッセル・テリアという大層敏捷な犬を連れている。高低差の激しい森の往復路を、ご婦人もテリアもヒョイヒョイ進む。その足色、都会の散歩犬どもを鼻で笑うかのようだ。 それは…

舶来品信奉亡霊蘇る

青空の下、ウッドデッキに腐食防止の塗料を塗った。毎年のこの作業は、デッキの木か僕たち夫婦か、どちらかが朽ち果てるまで続く。 塗料には決まりがある。四十数軒で構成されているビレッジ指定の舶来品を使わなくてはいけないのだが、この「舶来品」という…