『バスガール』

『バスガール』
 ♪田舎のバスはおんぼろ車 タイヤは泥だらけ窓は閉まらない…と歌ったのは中村メイコの『田舎のバス』(昭和二十九年)。♪若い希望も恋もある ビルの街から山の手へ…は初代コロンビア・ローズの『東京のバスガール』(昭和三十二年)。
『田舎のバス』は、路線バスの車掌さん。『東京のバスガール』は、はとバスのバスガイドさん。どちらも当時は「バスガール」。歌はいずれも大ヒットした。
 戦前、東京の市バスのバスガール(車掌)の制服は、三越百貨店受注のオーダーメイド。洋服を着ての勤務とあって女性たち憧れの職種だった。
 ぼくが初めて見た東京の路線バス(乗り合いバス)は、煙をモクモク吐きながら走る木炭バスだった。その乗降口に立つ若い制服姿のおねえさん。でも、それに違和感を覚える人はいなかった。それが時代というものだろう。都営の路線バスから車掌さんが消えたのは昭和四十年。すべてがワンマンカーへと切り替わった。(大阪では、昭和二十六年には早くもワンマンカーは走り出している)
 自動化は進む。バスばかりか諸々の商店からも、売買に関わる会話が消える。会話が再会されたとすれば、それは嗚呼…アンドロイド。