『お手玉』

お手玉
 お手玉遊びの歴史は古く、鎌倉時代にはすでに一般的になっていた。
 お手玉は駄菓子屋でも売られていたが、大概の子のお手玉は、お母さんやおばあちゃんの手づくりだった。もちろんその方が「自分のために作られた自分だけのもの」という思いがあって、愛着心も高まったと思う。
 お手玉の中身は小豆が多かった。ジュズ玉、椿の実、大豆、小石などを利用したものもあったが、手にした感触、シャラシャラ鳴る音の心地良さ、大好きなおしるこや赤飯の材料。そうした好感度が重なって、断然小豆に軍配が上がった。
 歌に合わせて、放り上げながら手の甲に乗せたり、指のトンネルを潜らせたりと、 遊び方はさまざまで〝お手玉歌〟も全国各地各様だった。
「おてのせ おろして おつかみ おろして おさらい おふたつ…」
 母は姪のためのお手玉を作った。作りながら「うちは男の子ばかりだからねえ」と言った。出来上がると、「ほら、こうするの」と親玉・子玉を操りながら、ぼくの前で実演して見せた。ぼくは「ふ〜ん」と言ったきりだった。(女の子だったら喜んでもらえたろうに…)と思ったことだろう。小さな後悔は尽きない。