『めんこ』

『めんこ』
 めんこの始まりは、江戸時代に粘土を焼いて作った『泥めん』。泥では壊れやすいというので、明治に入り『鉛めん』が登場した。ところがその鉛めん、鉛中毒が問題化して発売禁止に。そこから『紙めん』の登場となった。
『紙めん』が最も流行ったのは昭和二十年代ではなかったか? 路地路地に、めんこ遊びに興じるちびっ子の一団があった。遊び方は色々。地面にめんこを打ち付けて相手のめんこを裏返すのが「おこし」。積み上げためんこの中からあらかじめ決めておいためんこを弾き出すのが「ぬき」。ぼくたちの中では「ぬき」が主流だった。
 めんこの絵柄はヒーロー中心。丸めん(円形)は源義経とか木曽義仲といった武将絵が多かったが、「ぬき」に使ったのは角めん(長方形)。その絵柄は、相撲だと美男の横綱吉葉山プロ野球だと赤バットの川上とか青バットの大下。映画なら鞍馬天狗嵐寛寿郎丹下左膳大河内伝次郎。架空では黄金バット…といったところ。
 めんこは駄菓子屋で売っていたが、ぼくは買ったことがない。何枚か借りるだけで、夕方には一財産を生み出せた。ある時、それを塀の上からばら撒いて、みんなが拾うのを見てハッとした。自身が生んだ最悪の行為。今もトラウマとなっている。