『姉さんかぶり』

『姉さんかぶり』
 掃除はもとより、洗濯、裁縫、綿入れ仕事…と、家事全般にがんばる〝主婦の勤労帽〟とでも言うべき「姉さんかぶり」。その姿を見るにつけ「ああ、働くお母さんっていいな」─みたいな気持ちが無意識の中で、誰の心にも蓄積されたと思う。
「姉さんかぶりは看護師さんの白衣と同じ。さあ仕事をと思うと、手が自然と手拭いに伸びていましたよ。埃を避ける目的は当然として、やらなくてはいけない主婦の辛い仕事に対する〝勢い付け〟みたいな意味もあったかねえ」とは、超高齢の縁者の弁。
 郷愁を語るとき、その郷愁の多くを生み出してくれたのは、姉さんかぶりの女性(主に母)だったと気づく男性は多いと思う。
 その姉さんかぶりを、最近、目にすることが少ない。つまり手拭いを見ることが少ない。手拭いほど便利なものが、なぜお役御免になったのだろう? 体を洗い、汗を拭き、大掃除にはマスクにもなる。景気づけに無くてはならないのは鉢巻。ドジョウ掬いの小道具にも、泥棒稼業の頬っかぶりにもなった。手拭いとしての一線を退いてからも、布巾となり、雑巾となり、身が擦り切れるまで働き通し、最後は燃えて自然に帰る。利用価値も環境貢献度もナンバーワン。復活を待ちたい。