『焚き火』

『焚き火』
  ♬垣根の垣根の曲がり角 焚き火だ 焚き火だ 落ち葉焚き♬
 教科書にも載っていた童謡の『焚き火』。焼き芋を焼いたり栗を弾かせたり…と、初冬の焚き火は子どもたちに暖を取る以外の楽しみも与えてくれた。
 屋外で働く大人たちの多くも、冬場は焚き火を囲むことから仕事を始め、夕方には、その日に出したゴミを焚くことで仕事を終えた。
 家庭の庭々からも、当時は焚き火の煙は立ち昇っていた。燃えないゴミと言えばビンや缶。ビンの多くは販売元が引き取ったし、缶はクズ屋が買ってくれた。つまり、再利用出来ないゴミが焚き火に回ったわけで、季語は冬だが、焚き火は一年中のものだった。プラスチック、ビニール、発泡スチロールといった化学合成の厄介物は無く、ダイオキシンの心配も無かった。「ゴミ」という言葉を持つのは、天地万物のうち人間だけ。ゴミを生み出すのも、自分で生んだゴミを嫌うのも、ぼくたち人間だけ。せめてぼくたちは、無害のまま自然界に還せるものだけを創造すべきではないか。
 焚き火は神秘だ。艱難辛苦を綴った日記も、時期を経て心が晴れれば灰と煙にしてくれる。ユラ〜リ、ユラ〜リ、切ない過去よサヨウナラ。