『オブラート』

『オブラート』
 オブラートは、苦い薬を包み込んで飲むためと、菓子類のベタつき防止用という二通りの目的で利用された。昔の薬は苦かったから、常備薬を持つ家庭だと、ちゃぶ台から手の届くあたりに大抵オブラートの丸い容器が置かれていた。飲みやすい薬が開発されるに至り、最近では、薬用オブラートをあまり見ることがない。
 薬とは縁の薄かったぼくの場合、オブラートと聞いて連想するのは菓子類の方。ゼリーもキャラメルもオブラートに包まれていた。口に含んだとき、甘味がすぐには伝わらないので(このパラフィン紙みたいなやつが邪魔だなあ)とよく思った。
 身近なオブラートとして想い出されるのは紅梅キャラメル。赤い包装箱で十粒入り十円。あまり美味くなかったが、中に巨人軍の選手カードが入っていて、ポジションごとの九枚と水原監督のカードを合わせた十枚を揃えると、バットやグラブなどの豪華景品が貰える触れ込み。金持ちの子を夢中にさせたが、その十枚がなかなか揃わない。水原監督のカードだけ出現率がやたらと低かったのだ。買っても買っても揃わないので子どもたちの万引きが増え出した。特定カードの出現率の低さを公正取引委員会も問題にした。かくして紅梅キャラメルは六年で消えた。