ひとしずく。その69

 娘が「ブログには、もっと楽しいことも書け」と言って来た。「ぐじゅぐじゅ、小言ばかり書き連ねるな」と言うのである。どうやら(あなたの子や孫の人生は長いんだから、周りを片っ端から暗い気持ちにしなさんな)ということらしい。気持ちは分かる。だから僕は、自分が生きているうちに完成しないであろうリニアや、観戦の可能性の薄い五輪なんかにモノ申さない。だけど、自身の死後であっても、子や孫世代に多大な悪影響を及ぼすであろうことには、金は出さないけど口は出す。例えば、以前にも触れたがカジノ誘致の話。
 国内でカジノ誘致の機運を高めたのは、元都知事の暴走老人だ。彼の暴走発言を力に、北海道、秋田、千葉、神奈川、大阪、長崎、沖縄などもカジノ誘致に手を挙げた。狙いは観光振興と経済活性化。「五輪前の開催なら、経済効果としての試算が大きく見込める」と口を揃える。
 彼らは目先のメリットだけを強調する。在任中の実績作りが目的だから、デメリットには触れない。重々解っていながら口に出さない。となれば、僕が言うしかないではないか。娘よ。かかる現状がある限り、僕は、きみの期待に副った「楽しい話」ばかりを書いてはいられないのだよ。
 厚労省研究班の推計によると、日本でギャンブル依存症を疑われる人が536万人いるそうだ。ギャンブルを我慢できない「病的賭博」が疑われるのは成人全体の4.8%。男性に限れば8.7%だという。この数字だけだと「ふ〜ん、そうなんだ」で終わってしまうかも知れないが、「病的賭博が疑われる割合は、普通の国で1%前後。日本の数字は突出している」と知ってごらんなさい。
 その原因を専門家らは、「日本の場合、パチンコ、競馬、競輪、競艇など手軽なギャンブル場が身近にあるからだ」と分析している。
 そんな状況下でも、「カジノがないと、日本経済はがよみがえれない」という人々。「経済のためなら、少しぐらいギャンブル依存症が増えてもいい。反社会勢力に活動の場を与えることになってもいい」って、バカ言っちゃあいけない。真面目に働いている人々を愚弄するにも程がある。僕は最近の日本に、どこか心の荒廃の兆しを感じてならない。
 そこで今日のひとしずく
『実権者の欲は、大衆という踏み台の上で開花する』