ひとしずく。その63

 全国知事会議が「少子化非常事態宣言」を発した。曰く「日本全体が衰退に向かうシナリオが整いつつある。今こそ国と地方は、総力を挙げこの問題に取り組む時だ」と。
 成るほど日本全国見渡して見るに、壊れかかった町の数は「夕張とそれから…」などと悠長に指折り数える量ではない。「早く手を打たねば」と、切羽詰まった焦りの宣言なのである。
 然らばどうする?「地方での出生率を増やせ」と言う。「地方における若年女性の減少を食い止めろ」とも「東京圏への若者流出を抑えろ」とも言う。大方が首都圏への一極集中を問題視しているのだ。日本の命運は「地域で働き、学び、暮らす場をどう形成するかに掛っている」と、大方がそう仰っているわけだ。
 みんなで知恵を出し合い、問題解消に挑もうとする姿勢は正しい。でもねえ、こう言ってはナンですが、「東京一極集中」を何らかの政策を以て食い止めるなんて、難しい気がするなあ。だってね、国のトップが意馬心猿みたいに「成長のあくなき追求」で突っ走っているんだから、「花の大東京には蜜がいっぱい!」と、地方の若者たちが思い込むの、それ無理ないもの。
 僕は、東京一極集中は、やがて自然に解消すると思っている。トップの描く意馬心猿的幻想なんて、いつまでも続くわけないもの。「ああ、生まれてきて良かったなあ」なんてことが一遍も無かったら、誰だって目が覚める。そうなれば、一極集中した若者たちは、井沢八郎とは逆方面の列車に乗る。「積極的平和主義なんかいらない。長閑な、安寧な、清々しい、友好的な…そうした環境の方が遥かに大切だったんだ」と、その時になって、きっと誰もが気付くはずだもの。
 そこで今日のひとしずく
『大抵の場合「恋人(東京)」とは、恋人そのものではなく、自分で勝手に創り出している「恋人像」なのである』