ひとしずく。その60

 〝戦争坊っちゃん〟は、いつでもタカタカ走ってる。
「坊ちゃん、坊ちゃん、どこ行くの?」
「これから鬼の征伐に」
「お腰に下げたアメ玉を、一つわたしに下さいな」
「上げましょう、上げましょう。一緒に鬼の征伐に、ついて来るなら上げましょう」
「行きましょう、行きましょう。あなたについて、どこまでも、家来になって行きましょう」
「そりゃ進め、そりゃ進め。つぶしてしまえ、鬼が島」
「もらったアメ、少しも甘くなかったけれど、進み出したら止まらない」
「そりゃ進め、そりゃ進め。水平線の果てまでも」
「地球は丸いと思ったが、水平線のその先は、落ちるばかりの崖ですよ!」
「いいからいいから、そりゃ進め、そりゃ進め」
「落ちますよ、坊ちゃん!」
「それが何だ! わたしは、わたしたちの村の平和のために戦うのだ!」
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「ねえ、 こんな絵本、誰が買うんです?」
「みんな買ったじゃないですか。村人の半分以上が。甘くもないアメを欲しがって」
 そこで今日のひとしずく
『世も末じゃよ』