ひとしずく。その31

 僕の手帳には絶えず数枚のテレカが挟んである。毎年手帳を更新するたびに、テレカは新年の手帳に移るわけで、かれこれ干支をひと回りした気がする。使わないのに捨て切れないテレカ。
 公衆電話はその昔、10円で無制限だった。10円で3分打ち切りとなったのは1969年。そのニュースを当時報道部員だった僕が企画物としてまとめた経験があるので記憶している。十台ほど並んだ新宿駅の公衆電話を10分置きにカメラにおさめたら、30分を超えた人が3人もいましたねえ。いい時代だったなあ。
 今年の四月からは消費税の関係で、10円の通話時間が57.5秒になるんですと。みなさん「あっしにはかかわりねえこって…」と言うでしょうけどね。
 公衆電話の数はピークの93万台から、今は21万台だとか。これ以上は減らせないと僕は思う。だって災害時は神さまなんだから。
 それにしても、ジェット機が、リニアが、通信が、配送が、何でもかんでも速くなるってどうだろう? 科学や化学の進歩も早くなるってどうだろう? 受精卵、ES細胞、iPS細胞、STAP細胞…。それを待つ人が沢山居ることも、素晴らしい発見であることも分かっています。でも…時間の短縮が人生を圧迫しているみたいで、僕、どこか息苦しいです。
 そこで今日のひとしずく
『望むことが叶わない幸せを、考えてみることがあってもいい』