ひとしずく。その30

 誰にでも好き嫌いはある。それが食べ物であっても、人物であっても、その他何事であっても。
 僕の場合、好きなものは多過ぎて書きようがないけれど、嫌いなものなら、それほど無いからスラスラ書ける。食べ物だと、味の濃い佃煮、肉の脂身、トリの足、甘いもの…。これらは御免被りたい。
 人物で言えば、「公人」と「私人」をヘロヘロ使い分ける人。「きょうは私人として参拝しました」とか「持論は別にありますが、今は中立を旨とすべき立場なので…」なんて平気で言える人。そういう人を僕は恐れるし、そういう人をその立場に据えた人も恐れる。
 そもそも一人の人間が、「公人としてはこうで、私人だったらこうだ」なんて、ボタン一つで切り替わる食い倒れの赤白人形じゃないんだから、在るべき生きざまじゃないでしょう?
 これに関して言えば、マスコミからして変だよね。記者会見の場で「それは公人としての立場ですか?」なんて聞く記者。これ、変化を容認した質問でしょう。かつてマスコミにも身を置いた僕としては、噴飯甚だしいんです。
 とにかく、一人の人間には尻の穴も蛇口も一つ。大衆小説の藤村大造じゃないんだから、多羅尾伴内になったり、片目の運転手になったり、「あるときは…」の一言でコロコロ変わらないで欲しいんだよね。
 そこで今日のひとしずく
『あんたはあんた。死ぬまであんた』