ひとしずく。その38

 小学五〜六年同窓のクラス会の幹事の端くれに名を連ねた。遡ること半世紀、昭和28年4月から30年3月までという時代。その期間は僕たちにとって、70余年の中の僅か2年間でしかない。だが紐解くと、その2年間が侮れない。交々話題のるつぼであった。
 例えば、テレビ放送が開始された。吉田内閣が終焉を迎えた。第五福竜丸がビキニの灰を被った。洞爺丸が沈没し、タイタニック以来の大惨事となった。力道山が登場した。シネラマが日本で初めて公開された。マリリンモンローがディマジオと来日した。「ローマの休日」が公開され、シラミ頭にもヘプバーン風が吹き捲くった。「君の名は」で風呂屋がガラ空き。茄子も南瓜もマチ子巻きになっちゃった。
 たった二年間の中での出来事である。これが特別の二年だったのか? あるいは、どの二年を取り上げても、このくらいのことが起こっているということか? どっちでもいいや。「ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず」なんだから、過去は、ただ懐かしく語らえればいい。
 そこで今日のひとしずく
『時間は過去を、銘酒の如く醸成する』