ひとしずく。その7

 散歩に出たら、ジャンパーの前部分にベチョッと白いもの。見上げると電線にカラス。「俺知らないよ」みたいな顔の憎たらしいこと。その身が黒いくせに糞が白いということにも、何だか無性に腹が立ちましたな。 
 カラスというのは復讐心が強く、根に持った相手には、変装しようが見破って倍返しするそうだが、その逆を喰わす能力を僕は持たない。そこが加えて悔しい。しかし策を労せぬ以上、無念であっても忘れるしかない。「忘れろ、忘れろ、忘れろ…」と呟きながら、ハンカチを犠牲にして、公園のベンチでキュッキュと糞を拭きましたですよ。
 そこで今日のひとしずく
『どうあろうと忘却は偉大な知恵であり、究極の解放である。認知症でない限り』